主な疾患と治療

泌尿器科の診療範囲

主な疾患と治療

  • 研究活動一覧
  • 前立腺がん
  • 膀胱がん
  • 腎盂・尿管がん
  • 腎細胞がん
  • 精巣腫瘍
  • 性同一性障害(GID)
  • 感染症
  • 排尿障害
  • 腎不全
  • 尿路結石

手術統計

臨床研究へのご協力のお願い

診察のご案内

  • 診療時間と担当医
  • 当院へのアクセス

セカンドオピニオンについて

セカンドオピニオンとは、自分の診療内容や治療法について、担当医以外の医師に意見を求めることです。
自らの治療に対して患者様自身が最良の方法を選択するため、私たちのセカンドオピニオン外来をご利用ください。

詳しくはこちら

尿路性器感染症

泌尿器科で一般的に取り扱う感染症を尿路性器感染症といいます。文字通り、尿路感染症と性器感染症を併せた概念です。ここでは日常的によくみられる尿路性器感染症と最近の問題点、問題点に対する当科の取り組みを紹介します。

表1に示すように、尿路感染症には感染症の原因となる尿路疾患(基礎疾患)のある単純性尿路感染症と、基礎疾患のある複雑性尿路感染症があります。

単純性尿路感染症には急性膀胱炎と急性腎盂腎炎で、文字通り急におこることが特徴です。尿路に基礎疾患のない20歳以降の女性に多く見られ、治療は尿中細菌の正体を明らかにするとともに抗菌薬(内服または点滴)の投与と水分摂取、日常生活の見直しを行います。
日常生活で気を付けていただくことは、

  • 1. 刺激物(アルコールやコーヒー、スパイスなど)を控える
  • 2. トイレを我慢しない
  • 3. 排泄後は前から後ろに拭く
  • 4. SEXした後に陰部を洗い、排尿して寝る

などが挙げられます。

表1. 尿路感染症の分類
    発熱
急性単純性 膀胱炎 なし
腎盂腎炎 あり
慢性複雑性 膀胱炎 通常ないが、腎盂腎炎等に移行すると発熱
腎盂腎炎 普段はなし、急性増悪で発熱

急性膀胱炎

健康な女性に多く見られる感染症で排尿痛、頻尿、残尿感、ときに血尿が出ることがあります。抗菌薬の内服で多くは数日で改善します。

急性腎盂腎炎

急性膀胱炎の症状ののち、38度以上の高熱をきたします。時に背部痛がみられることがあります。抗菌薬を点滴し、多くは数日で解熱して内服薬に切り替えます。病状によっては入院して治療を受けて頂くことがあります。

複雑性尿路感染症

尿路に基礎疾患を持っておられる患者様に起こる尿路感染症と定義され、男性も女性も起こり得ます。慢性的に細菌が棲みついていることが多く、基礎疾患には尿路結石症や排尿障害(尿が出にくい、膀胱に尿が多く残る)、尿路悪性腫瘍(がん)などが挙げられます。すなわち、尿の流れが悪い場合、尿を出すための管(カテーテル)や結石などの「異物」がある場合などに起こります。多くは慢性的で無症状ですが、細菌が暴れる条件が整えば発熱を伴う感染が顕性化(急性増悪)します。無症状で特に細菌が悪さをしていない場合には無治療で経過観察することもありますが、顕性化したら抗菌薬を投与とともに尿(膿)の流れ滞った部分から体外に取り出す管(カテーテル)を設置すること(ドレナージ治療)が重要になります。

問題点:薬剤耐性菌の蔓延

過去に入院や抗菌薬の投与を受けたことがある場合、抗菌薬が効きにくい細菌(耐性菌)が尿中にみられることが多くなり、深刻となっています。特に基礎疾患のある患者様において耐性菌が分離されることは珍しくありませんが、近年では基礎疾患のない単純性尿路感染症においても耐性菌の分離率が高くなってきています。当科で行っている主な対策は

  • 1. 当科で分離される種類や薬剤感受性を監視する(サーベイランス)
  • 2. 特定の菌種について薬剤耐性化のメカニズムの解明と対策を立てる
  • 3. 耐性化に寄与していると考えられるバイオフィルム形成
    (例:お風呂のヌメリや歯垢など)に着目した研究を進める

など広い視野をもって対応に当たっています。


性器感染症は発生部位と原因微生物によって多岐にわたります。
比較的頻度の高い性器感染症について、主に男性患者様について紹介します。

前立腺炎

前立腺は男性性器の一部で精液の一部を生成しています。細菌性前立腺炎は高熱や排尿痛、頻尿で発症し、尿が出にくい感じ(排尿困難感)を伴うのが特徴です。多くは大腸菌などの一般細菌が分離されますが、クラミジアや淋菌といった性行為感染症(STI)で起こることもあります。一般細菌による前立腺炎は尿路に基礎疾患のある患者様が多く、抗菌薬による治療のほか排尿状態を改善する治療(内服薬、手術など)を行うこともあります。クラミジアや淋菌が分離された場合には抗菌薬で治療します。

精巣上体炎

精巣上体は精巣に付属する柔らかい男性性器で、精子の輸送だけでなく精子の成熟や栄養補給に関与しているといわれています。精巣上体炎も前立腺炎と同様に発熱を伴い、陰嚢(たまぶくろ)の腫大と疼痛が特徴です。前立腺炎と同様、一般細菌による場合と性感染症の場合があり、抗菌薬の投与と冷罨法(冷やすこと)が治療の中心となります。

男性尿道炎

尿道炎は女性より長い尿道をもつ男性に起こります。ペニスの膣内挿入やoral sex(フェラチオ)によって菌が尿道内に侵入、定着して排尿痛や排膿(尿道から膿がでる)を引き起こします。原因菌はクラミジアと淋菌で約7割を占めるといわれており、いずれも抗菌薬で治療が可能です。尿道炎は性行為感染症の代表的な疾患であり、次項でも概説します。

性行為感染症(STI; Sexually Transmitted Infection)

性行為感染症は性行為によって伝播する感染症の総称で、クラミジアや淋菌による性器感染症のほか性器ヘルペス、梅毒、尖圭コンジローマのほか、肝炎やHIV感染症も含まれます。ここでは病原微生物別に主なSTIの病態と症状、治療について主に男性について概説します。

性器クラミジア感染症

性器クラミジア感染症はクラミジア・トラコマティスによって引き起こされる尿道炎、前立腺炎、精巣上体炎をいいます。セックスやフェラチオによって感染し、1-3週の潜伏期の後に排尿痛や尿道からの排膿を引き起こすことがあります。前立腺炎や精巣上体炎では発熱を伴って陰嚢が腫大することもあります。診断は尿中のクラミジア遺伝子の存在を証明する方法が一般的です。クラミジアで薬剤感受性が問題になることはなく、多くは内服薬で治療することができます。

淋菌感染症

淋菌もクラミジア・トラコマティスと同様、尿道炎や前立腺炎、精巣上体炎をおこしますが症状が強く、潜伏期間も短い(3-7日)のが特徴です。尿道から出る膿も黄色で「どろっ」としており、ひとめ見て診断できることも珍しくありません。正確には尿をつかって淋菌の遺伝子検索や培養検査を行います。治療は主に注射薬で行います。

性器ヘルペス

性器ヘルペスは単純ヘルペスウイルスによって亀頭や包皮(ペニスの皮)に水疱(水ぶくれ)、びらん(皮膚がずるりとむける)、痂疲(かひ:かさぶた)を形成します。痛みを伴うことが多く、早期から内服あるいは外用薬で治療します。再発することも多く、再発予防のために内服薬を継続して頂くこともあります。議論のあるところですが、肉眼的に水疱や潰瘍がなければセックス可能です。

梅毒

梅毒は梅毒トレポネーマによって引き起こされる性感染症の1つで、もはやめったに見られない疾患となりました。かつては梅毒の初期症状の一つである、硬性下疳という陰茎の無痛性硬結(しこり)や潰瘍で泌尿器科を受診されることがありましたが、現在では他の目的で行った血液検査で感染が判明することが多くなっています。治療は抗菌薬の内服で、初期の場合には完治します。

尖圭コンジローマ

陰茎や包皮、肛門周囲の皮膚に「いぼ」ができる病気で、ヒトパピローマウイルスによって引き起こされます。女性の場合、小・大陰唇にもできます。「いぼ」は徐々に多発、増大しさらに進行すると悪臭や時に癌を合併することがあります。電気的に、あるいはドライアイスや液体窒素による焼灼や、切除や塗り薬で治療します。治療しても再発することが多く、治療後も定期的な経過観察が必要です。いつからセックスしてもよいか、という答えはまだはっきりしておりませんが、治療前からコンタクトのある固定のパートナーであれば、治療後からセックスしてもよいでしょう。

性感染症の問題点:

  • 1. 淋菌の薬剤耐性 淋菌感染症を引き起こす淋菌の薬剤耐性が問題となっています。すなわち、内服薬で治療ができにくくなっており、注射薬による治療が必要になります。
  • 2. 性器クラミジア感染症 クラミジアの問題点は、特に女性では症状が出にくく、病院を受診しない患者さまが多いことです。放置すると骨盤内炎症症候群や不妊症を引き起こすことがあり、こまめな感染のチェックが必要です。
  • 3. 原因微生物の多様化 尿道炎において、クラミジアや淋菌のほか多種の微生物が原因微生物になりうる(非淋菌非クラミジア性尿道炎)と考えられています。すなわち、皮膚や口腔内の常在菌やトリコモナス原虫、マイコプラズマ、ウレアプラズマが挙げられます。当科では独自に尿道炎から分離したクラミジアの一種であるクラミドフィラ・キャビエという細菌に着目し、同菌の性状解析や疫学調査、病原性について研究を行っています。非淋菌非クラミジア性尿道炎についてはまだまだ不明な点も多く、今後の研究が待たれます。
  • 4. 社会的な問題点 性感染症を含む「性」に関する教育を行うにあたり、日本では行いにくい環境があります。そこには縦割り行政の弊害だけでなく、教育機関や教育委員会の協力が必要となるからです。 現在はオーラルセックスを含む性の多様化、低年齢化に伴って若年者の性感染症が問題となっています。避妊の必要性からピルを内服する女性が増加していますが、妊娠は予防できても性感染症は予防できません。性感染症の予防にはやはりコンドームの着用が重要であり、さらにセックスは神聖な行為で安易に行うものではないといった教育の必要性が今要求されています。