密封小線源治療で用いられるヨウ素125は、チタン製カプセルに被われた放射線物質です。
チタンカプセルの大きさは約1 x 5 mm の大きさで、このカプセルを
前立腺内に50〜100個ほど挿入します。
挿入された
カプセルは約1年間、放射線を放出し、前立腺内にある
がん病巣を照射します。

密封小線源治療は、前立腺内部から放射線を照射し、がん病巣を攻撃する治療法ですので、がん病巣が前立腺被膜内にとどまっている段階(Stage AまたはB)が基本的な適応となります。
局所進行性がん(StageC)や転移性がん(StageD)では適応となりません。
さらに限局性前立腺がんの中でも診断時のPSA、がん細胞の悪性度をみるグリソンスコア、画像診断の所見(前立腺容積35ml以下)によって小線源治療の適応基準が異なります。
岡山大学泌尿器科は日本で3番目にBrachytherapyを開始し、2009年9月末現在、434名の患者様に治療を行っています。
前記したように、限局性前立腺がんであっても、診断時のPSA、がん細胞の悪性度をみるグリソンスコア、画像診断の所見によって小線源治療の適応基準が異なってきます。密封小線源治療の適応として、がん細胞が前立腺被膜外へ浸潤していない可能性に分け、3つの群に分類しています。
1. 低リスク群
PSA:10ng/ml未満かつグリソンスコア6以下かつT2a(StageBに相当 がんは前立腺片葉の1/2以内にとどまる) まで
2. 中リスク群
PSA:10〜20ng/mlまたはグリソンスコア7またはT2b‐T2c(StageBに相当 がんは前立腺片葉の1/2を越えるか、両葉に進展する)
3. 高リスク群
PSA:20ng/ml以上またはグリソンスコア8〜10またはT3a(StageC)以上
低リスク群ではがん細胞が前立腺被膜外へ浸潤したり、リンパ節へ転移している可能性はきわめて低い一方、高リスク群では前立腺被膜外への局所浸潤やリンパ節転移などの可能性が高くなります。
また欧米での治療成績によると、低リスク群では小線源治療後の5年非再発率が80〜90%と、前立腺全摘出術とほぼ同等の治療成績が示されている一方、高リスク群では5年非再発率が50%を下回る成績が多く報告されています。
以上のような結果から、低リスク群に該当する患者様が密封小線源治療に最も適しているといえます。
中リスク群に該当する患者様にはホルモン治療を併用した密封小線源治療を行っています。当院では全国規模で行っているSHIP0804臨床試験にも参加しています。
高リスク群に対しては、体外から前立腺に向けて放射線を照射する外照射治療と密封小線源治療との併用療法が一般的に行われていますが、岡山大学では外照射併用療法を行っていないため、高リスク群に該当する患者様には小線源治療は施行していません。
岡山大学泌尿器科で治療を受けられた患者様の、治療後のリスク別PSA非再発率は以下のグラフの通りです。

前立腺内に集中して放射線を照射する治療ですので、体外から放射線を照射する外照射治療と比較すると、直腸や膀胱など前立腺周囲にある臓器への影響は少なくなります。
前立腺全摘出術との比較では、身体に対する負担が少ないこと、入院日数が少ないこと、性機能(勃起力)が約7割で温存できることが挙げられます。
副作用には治療早期と晩期の合併症に分かれます。
小線源治療後早期に生ずる副作用は、排尿困難、頻尿、尿意切迫感、残尿感、排尿痛などの排尿障害が主な症状です。
岡山大学泌尿器科で治療を受けられた患者様のうち、約6割の患者様で早期の副作用を訴えられています。
副作用が認められた場合、炎症を抑えるお薬や尿道を拡張するお薬を内服し、症状は改善されています。
また以下に示すように、時間の経過とともに症状は消失しています。
| 治療1ヶ月後 | 3ヵ月後 | 6ヶ月後 | 9ヶ月後 | 12ヵ月後 | |
|---|---|---|---|---|---|
| 副作用(%) | 58 | 28 | 10 | 3 | 1 |
| 自覚症状 | |||||
| 排尿困難 | 42.6 | 16.7 | 6.3 | 2.1 | 1.0 |
| 頻尿 | 34.2 | 5.4 | 3.1 | 1.0 | 0 |
| 尿意切迫感 | 29.2 | 2.5 | 3.1 | 2.1 | 0 |
| 排尿痛 | 8.4 | 1.0 | 0 | 0 | 0 |
| 肛門部痛 | 2.5 | 0.5 | 0 | 0 | 0 |
| 他覚的所見 | |||||
| 肛門部出血 | 0.5 | 0 | 0 | 0 | 0 |
| (複数回答) | |||||
小線源治療後晩期に生ずる合併症は放射線性直腸炎が主な症状です。通常、2〜10%で、出血を伴う直腸炎が生じるとの報告がなされています。ごくまれに潰瘍を形成し、時には人工肛門などを造設される場合もあるとの報告はありますが、通常は無痛性の出血で、止血剤などの内服治療にて症状は軽快します。
また、放射線による尿道狭窄を生じる場合があります。内服治療が無効な場合には内視鏡的な尿道切開術が必要となる場合もあります。
まず外来で治療前計画(プレプラニング)を行います。肛門から超音波の器械を挿入し
前立腺の大きさならびに形を観察します。
前立腺のどこに小線源を挿入し、何個の小線源を使用するのかなど、各々の患者さんに合った設計図を作成します。
この治療前計画で計算された小線源数を発注し、岡山大学付属病院に届くまで約1ヶ月かかります。
治療は入院で行われます。下半身麻酔をかけ、肛門から超音波の器械を挿入し、超音波画像を見ながら会陰部(陰嚢と肛門の間)から前立腺内へ針を刺入し、針を通じて線源カプセルを挿入していきます。
治療は保険診療となります。費用は挿入する線源数によって異なりますが、3割負担にて30〜40万円が目安となります。
入院日数は基本的には4泊5日です。治療前日に入院となり、翌日に治療を行います。
下半身麻酔のため、治療当日は1日絶食となりますが、翌日から食事可能となります。退院日にCT検査にて線源が前立腺内にきちんと挿入されているかを確認し、退院となります。
入院部屋は個室への入院となります。ご家族の付き添いは原則的には必要ありませんが、ご希望ならびに主治医の許可があれば可能となります。
退院後、まず約1ヶ月目に外来へ受診していただきます。その後、2ヵ月後さらに3ヶ月毎に受診していただきます。
治療1年後からは6ヶ月毎の受診となります。受診時には必ず検尿および採血を行い、治療の効果ならびに副作用の有無を確認します。
前立腺内に挿入された線源から体外に放出される放射線は非常に弱く、周囲の人々への影響はほとんどありません。
しかし身近な人への影響は考えなくてはなりませんので、退院の際、その生活様式から長時間、近距離で接する人が受ける放射線の影響を計算し問題が無いか確認します。確認後、患者様に線源カードをお渡しし、治療後1年間の線源カードの携帯をお願いしています。
また、治療1年以内に不慮の事故・他疾患にて不幸にもお亡くなりになった時、小線源を前立腺ごと摘出する必要性があります。
これは放射線物質を取り扱う法律上、決められたことです。もし患者様がお亡くなりになられた場合、ご家族の方は線源カードに記載してある連絡先にお電話いただき、主治医の連絡をお待ちいただくようお願いいたします。
また治療後1年以上経過していた場合は、線源からの放射線がゼロになっていますので、ご連絡は不要です。
線源はチタンでできていますが、チタンは人工関節など多くの医療材料で使用されており、安全性の高い金属です。治療後のMRI検査なども問題ありません。
また空港での金属探知機にも問題はありません。しかし、外国の国際空港によっては放射線探知機などに反応する場合があります。
海外旅行などされる場合、英語で書かれた説明書などをお渡しいたしますので、外来にて主治医にお尋ねください。
前立腺全摘出術と小線源治療は、どちらも限局性前立腺がんの治療法として確立されています。アメリカでは、ほぼ同じ件数の治療が行われています。
それぞれに長所・短所があり、どちらかが優るといったものではありません。患者様の社会的・個人的要素と医学的要素から治療を選択されるといいでしょう。外来にて何なりとご質問ください。

他の治療法を併用せず、小線源治療を単独で行う場合は、第1回目の受診・診察から第2回目受診(プレプランニング)まで約1ヶ月待ちとなっています。
プレプランニングは予約制で、毎週月曜日に行っています。
また、プレプランニングで計画された線源数を発注し、岡山大学附属病院に届くまでが約1ヶ月となっており、第1回目の受診から治療日までは約2ヶ月間待っていただくことになります(2009年8月末現在)。
小線源治療が行われるまで、何もしなくていいのですか?という質問をいただきます。
前述したように、密封小線源の適応となるのは低リスク群ならびに中リスク群に該当する患者様です。
両群に該当する患者様では、当科第1回目の受診から小線源治療が行われるまでの約2ヶ月間(2006年10月末現在)で、がんが前立腺被膜外に進展したり、他の臓器に転移することはありません。
また、この短期間でがんが進行する患者様では小線源治療の適応とはなりません。
毎週月曜日 午後 3:30 〜 5:00 (FAX 随時受付)
上記の時間帯以外のお問い合わせは、専門医以外のスタッフがお答えいたします。
泌尿器科外来直通(平日午後)086-235-7945 (FAX 086-235-6946)